Christian Scalas – Winter

01 grey sky
02 migration
03 rain
04 snow in the night
05 antartika
06 night without light
07 snow
08 winter in japan
09 snowfall feat. andrea allione
10 winter solstice

Christian Scalas『winter』
―寡黙に、結われる冬
文=松浦 達

例えば、00年代前半における、エレクトロニカからフォークトロニカという道の中では、フォーテットやビビオの存在などが便宜的に参照されもするが、“フォークトロニカ”という言葉そのものがさほど浸透し得なかったのは元来、電子音楽が孕む宿命のひとつに、最小単位の水面に波紋を広げるようなテクスチャーを遡及、反芻してゆくとともに素材としての音、とその処理を限定化することで無機的なロマンティシズム(安易なマニエリスモではなく)とでもいおうか、美しい音風景を浮かばせる語法でもあったからで、そこにおいて、10年代、エレクトロニカはじわじわと再び、調整的で、反復性とスタティックな和声の進行、敢えて細部への美学を援用するケースも散見されるようにもなってきている。だからこそ、現今のいわゆる、エレクトロニカとはアンビエントやミニマル・ミュージック的にもなってしまうことも出てきてしまう。

イタリア出身の、サウンドデザイナー、エンジニア。KRYSS HYPNOWAVE名義で見受けた人もいるだろう。そこでは、ダイレクトにフロア・ライクなダンス・ミュージックも多かったが、このたび、Christian Scalas(クリスチャン・スカーラス)という初の本名名義となるアルバム『winter』では、一転、まさに、エレクトロニカが更新(/後進)すべく、シンプルながらも、耳を澄ますほどに視界に色彩が溢れ、想像力が高められる内容に帰一した。ボーズ・オブ・カナダ、aus、Ametsubなどのサウンドが保つ幽玄性と幻惑も包摂しながらも、ただ、それがテーマとしての具体的な冬へと向かうことで、抽象性や高尚なエリーティズムを免れている。

「grey sky」、「rain」、「night without light」、「snow」、「winter solstice」という曲名からもわかるとおり、冬という季節の中で幾つも訪れる瞬間を切り取った素材としての音をあえて限定してゆく。だからこそ、プロセスとしてサウンド・アートとしての記号論、自らのサウンド・デザインを模倣し続けるようなところが美しくもあるとも思える。

海外では日本の「俳句」に対して良い解釈がなされることがあるが、それは、俳句という5・7・5という限定された中に意味を込めるストイシズムが愛でられることと同時に、現代病のひとつとして、饒舌に語りすぎることで本来の意味を喪ってしまうというイロニカルな失語的所作から再び、“縄抜け”する意図も汲まれているのかもしれない。

この、『winter』は寡黙に冬を想う。ただ、それだけがとても美しい。

¥ 1,500

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